院長のブログ

カピバラの水洗トイレ

久々の休みの昼食に、旬なお魚を食べようと三浦半島の佐島に車を走らせました。行きつけの魚介・海鮮料理「海辺」で、相模湾越しに、遠くに伊豆半島、大島や富士を眺めつつ、波の音を聴きながらの昼食は格別でした。

満腹になった後は、三浦半島で自然や動物と触れ合える体験型の横須賀市営公園「長井海の手公園・ソレイユの丘」まで足をのばしてみました。

園内は小高い丘といい、建物といい、のどかな南仏の田園風景を彷彿させます。真っ先に向かったのは、やはり「ふれあい動物村」その中に珍しい動物を見つけました。4頭のカピバラです。静かに座っていて自由に体をなでさせてくれるのです。なんでもテンジクネズミ科に分類される最大の齧歯類で、50kg~60kgはあるようです。

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しばらくすると4頭が一斉に走り去り、池の中に入り、踝あたりまで水に浸って、皆同じ方向を向いてじっとしているのです。揃ってオシッコをしていたのです。「へぇ~、水洗トイレなんだ。」と感心していたら、今度はみんなで、なんとその池の水を飲み始めたのです。

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”Oh, my God!!” トイレと水飲みが一緒だなんて、何か間違っていませんか!?

ショックを受けましたが、後で調べてみると、カピバラはアマゾン川流域の水辺に棲息していて、大アマゾンにとってみれば、カピバラのオシッコなんて大海の1滴に過ぎないと言ったところでしょうか。

やはり自然は動物に誤った習性を与えてはいないんだと改めて感心しました。

優しい男性(ひと)、幸せな女性(ひと) イラスト:獣医看護師 高波莉沙/村山渓菜

吐く息が白くなる程冷え込んだある朝、伊藤さんとおっしゃる若い女性が出勤途中に道端ですっかり弱ってうずくまっている猫を見つけてきました。成猫でありながら体重は1.2kgしかなく、体温は30℃に低下していました。一般的な猫の体重は4㎏位。平熱は38.5℃です。骨と皮だけという形容がぴったりで、膿性の目ヤニと鼻汁が顔の半分位を覆い、やっと生きているという状態でした。

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たまたまこの猫を道端で見つけてしまった為に、伊藤さんには様々な責任が生じてしまいました。彼女はパートナーにこの出来事を知らせ、相談する為に彼の携帯に電話しましたが、あいにくと繋がりませんでした。今までこのようなケースで、ご主人の理解が得られなかった例も見てきただけに、伊藤さんの美しいお気持ちが無駄にならなければ良いがと内心心配しました。

夕方伊藤さんがパートナーを伴ってやってきました。彼は彼女が連れてきた猫をまるで男性が初めての我が子に対面した時のような表情で、満面の笑みを浮かべてのぞき込むのでした。そして、回復したらその猫を引き取ることが、既に決まっていたのです。病状がわずかでも良好な時の彼の笑顔の眼差しと口元のほころびがとても素敵で、本当に心優しい男性だなと心打たれるばかりでした。

そしてこのような心優しい男性と価値観を同一にして生活して行ける伊藤さんは、なんて幸せな女性なんだろうとつくづく思いました。

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しかし喜びも束の間、血液検査で猫エイズに罹っていることが判明したのです。この病気は人間には感染しませんが、猫同志お互いに舐め合ったり、食器の共有で感染する可能性もあるので、他の猫とは隔離しなくてはなりません。ところが伊藤さんは既に猫を1匹飼っていて、しかもワンルームマンションにお住まいだったのです。隔離は不可能でした。一時は暗い雰囲気に包まれましたが、なんと伊藤さんはこの猫を迎え入れる為に2DKのマンションに引っ越すことにしたのです。

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最初は灰色の猫だとばかり思っていましたが、病院で清潔な環境にいるうちに汚れが落ちてきて、どうやら白いネコらしいと気付き始めました。21日間の闘病の末、皆の声援に支えられて病気を克服し、めでたく退院できる日を迎えました。お祝いにシャンプーしてあげると純白の猫になったのです。みにくいアヒルの子が、見事に白鳥に変身し、伊藤さんの胸に大事に抱かれ、新しいマンションへと向かいました。

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脾臓の腫瘍

武蔵野市にお住いのK様の愛犬、ワイマラナーのジョディーちゃん。

散歩から帰ってしばらくしてから突然足腰が立たなくなり、首を持ち上げることも出来なくなり、意識も朦朧として虚脱状態に陥ってしまいました。

往診を依頼され、吉祥寺まで急いで駆けつけました。病院に連れて来た頃には幸い意識は大分回復していました。

全身を隈なく診察すると、左上腹部がわずかに膨れているのに気付きました。

「脾臓の腫瘍か…?」

超音波検査をしますと、やはり脾臓が全体的に肥大していて、中央部に直径12cm位の腫瘤が確認されました。

もともと腹腔が深い犬種であり、脾臓が肥大している上に腫瘍が大きかったので、手術がやり易いように脾臓を腹腔から出すことが困難で、腹腔内でレーザーメスを駆使して脾臓の摘出に成功しました。

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脾臓の腫瘍では血管肉腫という悪性で極めてたちの悪い腫瘍が有名ですが、病理組織学的診断の結果、血管腫で良性でした。

退院時にシャンプーをしてお家に帰りました。

金子 ジョディー

ジョディーちゃん、まだまだ生きられますよ。良かったですね。

 

輸血犬、秀君の大活躍

1月2日、世田谷区粕谷のミニュチュアシュナウザーのめいちゃんが、陰部からの出血がひどいとのことで来院しました。

紙おむつを外してみると中は血の海。尚も陰部からボタボタと出血し続けています。発情による出血ではありません。

2日前から出血し続けていたので既に貧血していて、また白目や腹部に紫斑が出て血小板が著しく減少していました。一刻も早く出血を止めないと失血死してしまいます。

出血をSTOPさせるためには、出血部位と思われる卵巣や子宮を手術で摘出しなければなりません。しかし、止血作用のある血小板が著しく減少しているのでひとたび体にメスを入れたら、そこからの出血が止まるかどうかわかりません。

血小板を増やさなければ!血小板減少の原因は?免疫介在性…?その他…?

免疫抑制剤を投与して血小板が増えるまで待つ日数的余裕は無し。それに子宮からは膿も排出されています。感染に免疫抑制剤は禁忌。このピンチを救うのは輸血以外にありません。

ここで、先月テレビ朝日の番組「くりーむしちゅーのハナタカ!優越館:日本人の2割しかしらないこと。動物病院にペットがいる目的はピンチの時に役立つからだった?!」にも出演した当院の輸血犬・秀君にひと肌ぬいでもらうことにしました。

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秀君の血液型はDEA1.1陰性なので、どの犬にも輸血が可能です。今回は時間的余裕がなかったのでクロスマッチテストは省略しました。

輸血をしながら、予め注射針で皮膚から出血させ、普通よりは時間がかかるものの、止血されることを数回確認してから手術を開始しました。開腹すると腹腔内も血の海。出血部位は右の卵巣でした。最初から最後まで止血を入念に行い

手術は無事終了し、翌日から食欲が回復し、6日後には出血斑もすっかり消失して、貧血と血小板数も改善したので退院しました。

三が日も、いつも通りに頑張って、命を救うことができて本当に良かったです。

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血を分けためいちゃんと秀君、喜びの飼い主の杉原様と院長。

子宮粘液症

世田谷区給田のTさんのお宅のエルモちゃん。

食後30分後に食べたものを苦しそうに吐いたとのことで来院されました。

診察中にお腹が大きい事に気付きました。

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人間でも単にメタボでお腹が出ている人もいますから、その辺のところを飼い主様に伺ってみますと、首をかしげながら「いつも通りだと思います。」というご返事でした。

しかし、触診している指先からは「異常だよ!異常だよ!」という信号が送られてくるので、腹部のエコー検査を行いました。

すると大きな嚢胞(のうほう)が写し出されました。

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「避妊手術が済んでいないので子宮かな…?」

「今日も食欲と元気があったので、血液検査からも判断して、よくある子宮蓄膿症ではなくて子宮粘液症かな…?」

液体の貯留で大きくなった子宮が胃を圧迫され嘔吐したと思われました。

卵巣子宮摘出手術をお勧めし、飼い主様には一晩考えていただくことになりました。

翌朝、エルモちゃんの元気、食欲がなくなり朝一番でご来院されました。

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上の写真はエルモちゃんの摘出後の子宮です。普通は写真の右上に写っているボールペンぐらいの太さです。

中には大量の粘液が貯留していました。そして二日後にはガツガツ食べるようになって、退院しました。

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良かったね、エルモちゃん!

 

ねずみ退治のつもりが…

狛江市にお住まいのF様のご愛猫、メイクーンの玲ちゃんが昨日から7回も嘔吐して、食欲も全く無くなってしまいました。

バリウム造影による腹部X線検査や超音波検査の結果、腸閉塞と診断しました。

開腹手術を行うと、十二指腸の一部が異物によって閉塞されていました。

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腸を切開して異物を摘出すると、それはねずみのおもちゃでした。

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ねずみ退治のつもりが、悲惨な目にあってしまいました。

それでも術後2日目には食餌を完食するようになり、4日目には退院できました。

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喜びのF様ご夫妻と玲ちゃんです。

命拾いしたプッチ君

世田谷区北烏山にお住まいのS様のご愛犬、チワワのプッチ君。

昨夜からせき込んで呼吸困難になり、今日はふらついて食欲もないということでご来院されました。

聴診すると著しい心雑音が聞こえ、呼吸数は1分間に140回もありました。(普通は10~20回位)

正に生死の境目の状態にありました。

十分に酸素をかがせてから胸部のレントゲン撮影をすると肺の後葉に肺水腫が認められました。

すぐさま酸素室に収容し、治療を開始しました。

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1日目には呼吸数は30回ぐらいに落ち着いてきました。

初診時は注射も投薬もされるがままでしたが、翌日はいきなり噛み付いてきました。

それほど元気になったということです。

2日目には食事も完食するほどになり、レントゲン上でも肺水腫は消失したので、退院することになりました。

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    左:初診時のレントゲン写真        右:3日目のレントゲン写真

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S様のお子さんたちも大喜び!!

お腹の中にボールが3つ!

世田谷区にお住まいのO様。

保護犬の里親として10歳を超えていそうなオスのラブラドル「福ちゃん」を飼うことになりました。

健康診断を兼ね、お座りするのがつらそうとのことなので、脊椎のレントゲン写真を撮ると、原因は変形性脊椎症とわかりました。

そして偶然にも胃の中に異物が発見されました。

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どうやらつぶれたものを含むボールを3個、飲み込んでいるようです。

形状と大きさから判断して内視鏡による異物鉗子で摘出するのは不可能と考え、胃切開して摘出しました。

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手術後は以前にも増して元気になり、食欲も旺盛です。今日、退院しました。

福ちゃん、良かったですね。

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猫ちゃんに縫い針はご用心…

Tさんの6歳のアメリカンショートヘアーのあずさちゃんが昨日から急に食欲と元気がなくなり、お水ものまないので心配になり来院されました。

まず、下唇がよだれでわずかに汚れていました。口を開けるのを嫌がり、ちらっと見た限りでは舌の左下がガマ腫のように腫脹してました。

また左の下顎部も腫脹していたので、あたかも下顎の唾液腺嚢腫を思わせました。

※唾液腺嚢腫:唾液腺の導管が破れて唾液が漏出し、舌の下に貯留するとガマガエルのように見え、頸部が腫脹するケースもあります。

 

しかし、猫の唾液腺嚢腫は極稀であること。唾液に膿が混ざっていること。頸部の腫脹が通常よりもやや上部であることから疑問に思い、全身麻酔で口をしっかり開けて喉の奥の方まで調べると、青いものがチラッと見えました。

ピンセットで少しつまみ出してみるとそれは縫い糸でした。

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猫が縫い針付きの糸を飲み込むことがよくあるので、糸を無理に引っ張ると針が咽頭や食道壁を傷つけることも考えられるので、レントゲンを撮ってみました。

するとやはり縫い針が舌の下方に埋没していました。

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針の摘出はいとも簡単でした。

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その日のうちにゴハンを食べるようになって機嫌良さそうにすりすりしてきて

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「ありがとう」と言っているようでした。

おばあさん、すごい!!

世田谷区砧にお住まいの根岸様。いつものように愛犬ケビン君を散歩させていると、途中で80歳近いおばあさんから

「ちょっと足の先が太くなったんじゃない?先生に診てもらったほうがいいよ~。」と言われました。歩き方がゆっくりなってきたのは年のせいかと思っていたのですが、心配になり、その日のうちにご来院されました。

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身体検査の後に、前肢、後肢のレントゲン撮影をすると、中手骨と中足骨に左右対称に断崖様の骨膜反応を認めました。

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これらの症状と所見から、ある病気が頭に浮かび、咳をしないか伺ったところ、抱き上げた時に咳をするとのことでした。

今度は胸部のレントゲン撮影をすると、左肺前葉領域に7cm×4cm位の腫瘤が発見されました。従って肥大性肺性骨症と診断しました。

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肥大性肺性骨症は胸部の肺腫瘍、慢性感染症、肺膿瘍などの慢性疾患に対して骨膜が反応します。肺の病変がどのようにして骨膜反応を起こすのかまだ解明されていませんが、最近、肺病巣に続発して、末梢の血管供給の増加が指摘されています。肺の病変が治療されると足の方も良くなります。

おばあさんの一言により、足の病変のみならず肺腫瘍があることまで発見されたのですから、おばあさん、本当にすごいsign03

一段落して空想の世界に浸りました。

おばあさん、肺腫瘍のことまでお見通しだったのかも知れない…だとしたら魔法使いみたいだ…

あるいは、今は引退しているけれど、昭和30年代に獣医大学を卒業したベテランの女性獣医師だったかもしれないぞ…