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フロリダのマナティー

フロリダのマナティーフロリダ大学獣医学部でのセミナーを終え、私はオランドの空港から人魚のモデルと言われるマナティーを見るためマイアミに飛びました。
マイアミ・シークアリウム(マイアミ水族館)はビスケーン湾に浮かぶ小さな島バージニアキーに有り、ダウンタウンからリッケンバッカーコーズウェイで結ばれています。眩いばかりの青い海と遠くのビル群の美しい景色に感動しながらシボレーを走らせました。

フロリダマナティーはジュゴンと共に海牛目に属する水性哺乳動物で、淡水にも海水にも住むことが出来ますが、水温が25℃~30℃あることが必須です。ジュゴンとの相違点はジュゴンの尾が鯨のように半月形であるのに対し、マナティーのは丸くうちわ形です。また生息地も異なります。

祖先は象と同じで、6千万年前にアフリカやユーラシアに住んでいた四足の動物が陸を捨てて海に入って新しい環境に適応し、進化したと考えられています。その根拠は前肢が変化してオールのようになった前ビレには3から4本の指があり、先端には象と同じ爪が生えています。下唇の形も象とよく似ています。全体の格好は鯨やイルカににているけれど、マナティーは象と同じベジタリアンです。

カリブインディアンの言葉で、「マナティー」は女性の胸を意味するそうです。マナティーの1対の乳房はまさに人間と同じ位置に有り、育児中はふっくらと膨らんでいます。また、餌となる水草を前ビレでつかんで口に持っていく姿から人魚伝説が生まれたそうです。

私が色々質問すると係員は以上のような説明をしてくれました。会話の中で私が獣医師であると知ると、急に親しげになって、特別にプールサイドに入れてくれました。手で水面をバチャバチャ叩いて、ジュリエットというマナティーを呼び、鼻づらをなでさせてくれました。肌触りとか、まばらなヒゲや窪んだ小さな目が、なるほど祖先が象と同じということに納得させられました。

ジュリエットはこの水族館のマナティーの中で最古参で52才。以前プエルトリコのラ・パルグェラで病気に罹かったみなし子のマナティーが発見された時、丁度子育て中だったジュリエットのミルクを半分、数百マイル離れたプエルトリコに空輸して命を助けたといいます。なんと素敵な話しでしょう。

一方、最近はボートのスクリューで傷つけられるマナティーが多い。マイアミシークアリウムではレスキューチームを出動させ、水族館のプールに連れてきて獣医師が治療し、リハビリをさせ、また元の場所に戻してあげるそうです。今までに65回もの実績があるそうです。

マナティーは大きいものでは3mを優に超え、1トン近いのです。しかも水性の動物です。一口に水族館に連れてくると言っても大変な作業であるに違いありません。

しかし、フロリダにはマナティーはもう2300頭しかいません。それらを保護し、以前のように増やそうと頑張っている人達の意気込みに触れ、私も日々動物の命を助けようと頑張っているだけに、なおさら深い共感と強い感動を覚えました。

ジュリエットに別れを告げ、再びシボレーのハンドルを握りました。帰路のハイウェイから望むダウンタウンの高層ビル群が夕暮れの紅に映え、一層美しく見えました。

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